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解説記事

トラック運転手の深夜手当・手取りはいくら?
夜間配送のモデルケースで計算

公開日 ・ 最終更新日 ・ 読了 約8

執筆: 夜勤ツールズ編集部

けんじ、「歩合に割増なし」のうわさを疑う

※ 登場人物・会話は、制度上の論点を説明するために作成した架空の例です(実在の相談や体験談ではありません)。

同期くんの「歩合に割増なし」は、実はよくある誤解。 歩合給の部分にも深夜割増(+25%)は必要で、固定給と計算方法が違うだけです。 けんじさんと同じ夜間便(20時〜翌5時・月12回)・月給27万円のモデルで、額面と手取りの内訳を計算します。

30秒でわかる結論

  • 月給27万円・夜間便12回(20:00〜翌5:00)のモデルで額面は約31万円、手取りは約25万円
  • 深夜手当の正体は法定の深夜割増(+25%)。運送業も例外ではない
  • 歩合給にも深夜割増は付く。「歩合だから無い」は誤解

自分の勤務パターンで手取りを試算する(無料)

謎: 同じ月給の同期と、なぜ手取りが違う?

基本給は同じなのに手取りが違う—— 差を生んでいたのは深夜手当の行です。

22:00〜翌5:00の労働には、基礎時給の25%以上の 深夜割増賃金の支払いが必要です(労働基準法37条)。これは運送業も例外ではありません。 会社が独自に定める「夜間手当」「夜勤手当」とは別の、法律上の支払い義務です。 夜間便中心のけんじさんと日勤便が多い同期くんとでは、この行の時間数が違っていたわけです。

けんじさんの夜間便で再現する(月給27万円・20時〜翌5時)

夜の休憩所で配送伝票とスマホを見比べ、深夜帯の時間数を考えるけんじさん
伝票とスマホで「深夜帯を何時間走ったか」を数えるけんじさん。ここが手取りの分かれ目です。

モデルの条件はこうです。

  • 月給(基本給): 270,000円
  • 無事故手当: 10,000円(会社独自の手当の一例。支給条件は会社ごとに異なる)
  • 月平均所定労働時間(就業規則などで定める1か月あたりの平均所定労働時間): 170時間(割増賃金の基礎単価 (270,000+10,000) ÷ 170 ≒ 1,647円)
  • 勤務: 夜間便12回+日勤9回の月21日勤務(各週の勤務日は5日以内)
  • 夜間便: 20:00〜翌5:00(拘束9時間=始業から終業までの時間、休憩1時間・1:00〜2:00、実働8時間)
  • 日勤: 9:00〜18:00(休憩1時間、実働8時間)

ここでひとつ大事なポイントがあります。無事故手当のような名称の手当は、原則として割増賃金の算定基礎に含まれます。 そのためこのモデルでも、無事故手当1万円を含めた28万円を170時間で割って 基礎単価1,647円を出しています。基本給だけで割った単価で深夜割増を計算している明細は、 過少になっている可能性があります。

算定基礎から除外できる賃金の詳しい範囲(法定の限定列挙)
算定基礎から除外できる賃金は、家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・ 臨時に支払われた賃金・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金という法定の限定列挙のみで (労働基準法37条5項・労働基準法施行規則21条)、名称ではなく実態で判断されます(住宅手当は住宅費に応じて算定されるものに限り、一律支給なら算入します)。
週40時間以内に収まる1週間の配置例(モデル設計の詳細)

1週間の配置例はこうです。夜間便(実働8時間)×3回+日勤(実働8時間)×2回=週40時間。 これを4週続けると夜間便12回+日勤8回になり、残る日勤1回は端数週(5週目)に置きます (端数週は勤務日を減らす)。この配置なら、どの週も実働40時間以内に収まります。

月合計は168時間で月平均所定労働時間170時間の範囲に収まるため、基礎賃金は月給でカバーされます。 本記事の試算はこの配置例を前提としており、特定の週に勤務が偏って週40時間を超える場合は、 超えた時間分の賃金と時間外割増(+25%)が別途発生します。

このモデルの実働は全シフト1日8時間・週40時間以内(月合計168時間)に収まるため、 時間外労働(法定の時間外割増の対象)は発生しない設定です。

夜間便 20:00〜翌5:00(休憩 1:00〜2:00)
20:00 出勤5:00 退勤
勤務時間深夜割増の対象(22:00〜5:00)休憩
改善基準告示との関係(このシフトが基準内に収まる理由)

このシフトは改善基準告示(2022年12月改正、2024年4月適用)も前提にしています。夜間便の拘束時間9時間は原則の13時間以内、翌5時に終えて同日20時に始める場合の休息期間15時間は 「継続11時間以上を基本とし9時間を下回らない」を満たします。基準値・例外・用語の定義は後述の「拘束時間と労働時間は別物」の表にまとめました。

夜間便の拘束時間と休息期間(このモデル)
  1. 20:00勤務開始
  2. 翌5:00勤務終了(拘束9時間)
  3. 同日20:00次の勤務開始(休息期間15時間)

深夜割増がつくのは何時間分?

夜間便では、22:00〜翌5:00の7時間のうち休憩(1:00〜2:00)を除いた6時間が深夜帯の実働です。月12回で72時間になります。

このモデルは実働が1日8時間・月168時間で所定の範囲に収まるため、上乗せは深夜割増のみです。

実働8時間を超える便がある場合の割増(例外)
実働が1日8時間を超える便では、超えた時間に時間外割増(+25%)が別途つき、 それが深夜帯(22:00〜翌5:00)と重なる時間は合計50%増になります。
区分金額の目安
深夜割増(約1,647円×25%×72時間)約29,647円

※ 1日8時間・週40時間を基準とする単純化した計算です。1か月単位の変形労働時間制を採用している会社では時間外の数え方が異なります。

額面と手取りはいくら?

項目金額の目安
基本給270,000円
無事故手当10,000円
深夜割増(72時間分)約29,647円
額面合計309,647

額面から社会保険料(本人負担で額面の15%前後)と所得税・住民税が引かれるため、 手取りは額面の8割前後、このモデルでは25万円が目安です (ツールと同じ簡易控除率〈社会保険料15%・所得税相当5%〉による概算で、住民税は含みません)。 標準報酬月額や扶養人数などで実際の金額には個人差があります。

拘束時間と労働時間は別物——改善基準告示の数字と割増計算の関係

「拘束13時間」「休息9時間」は運転手の日常語ですが、深夜割増の検算に使うのは労働時間であって拘束時間ではありません。

用語定義(改善基準告示の解説資料より)基準値(トラック・2024年4月〜)深夜割増の計算との関係
拘束時間始業から終業まで(労働時間+休憩時間)1日13時間以内(上限15時間)。1か月284時間・1年3,300時間以内休憩を引いたものが計算対象
休息期間終業から次の始業まで継続11時間以上を基本とし9時間を下回らない対象外
労働時間作業時間+荷待ちなどの手待ち時間1日8時間・週40時間が法定(労働基準法32条)22:00〜翌5:00に重なった分 × 基礎単価 × 0.25
休憩時間業務から離れて自由に利用できる時間労働6時間超で45分・8時間超で1時間以上(同34条)対象外(モデルでは1:00〜2:00)

近畿運輸局の解説資料は荷待ちなどの手待ち時間を労働時間側に置いており、深夜帯の荷待ちは深夜割増の対象です。 「拘束13時間以内だから残業代は出ない」は誤りで、休憩1時間なら労働12時間、4時間が時間外です。

職場で変わる点(変形労働時間制・36協定・仮眠の扱い)と確認先

1か月単位の変形労働時間制では、シフト表で10時間と定めた日は10時間を超えた分だけが時間外です(就業規則と勤務割表で確認。深夜割増は変わりません)。 自動車運転の業務は2024年4月から36協定の上限が年960時間です(協定の写しは事業場に備え付け)。仮眠を休憩とするか労働時間とするかは業務から完全に解放されているかで判断され、賃金規程・運行指示書が確認先です。

本題: 「歩合に割増なし」は誤解——計算式で展開する

歩合給の部分にも割増賃金は必要です。固定給とは分母が違うだけで、固定給は「月平均所定労働時間」(労働基準法施行規則19条1項4号)、 歩合給は「その賃金算定期間の総労働時間」(同6号)で割り、両方ある場合は合計します(同7号)。月27万円のうち5万4,000円が歩合給だった場合の式です。

固定給21万6,000円+歩合給5万4,000円+無事故手当1万円の月(深夜帯72時間・総労働時間168時間)

① 固定部分の単価 = (固定給 + 無事故手当) ÷ 月平均所定労働時間 = (216,000 + 10,000) ÷ 170 = 1,329(計算は丸めず、表示のみ円未満を四捨五入)

② 歩合部分の単価 = 歩合給総額 ÷ 当月の総労働時間 = 54,000 ÷ 168 = 321

③ 深夜割増 = (① + ②) × 0.25 × 深夜帯の労働時間 = (1,329 + 321) × 0.25 × 72 = 29,715

歩合の分母が「総労働時間」(時間外を含む)なので、残業が多い月ほど歩合の時間単価は下がります。歩合部分の時間外割増は単価の25%分だけを上乗せする(1.25倍ではなく0.25倍)整理が一般的です。 除外できるのは法定の除外賃金(同規則21条)だけで、端数処理を含む具体的な計算方法は勤務先の賃金規程を確認してください。

歩合比率3パターンの深夜割増比較表(月27万円は共通)

無事故手当1万円・深夜帯72時間・総労働時間168時間・月平均所定170時間は共通です。単価と割増は丸めずに計算し、表示だけ円未満を四捨五入しているため、表示の単価から再計算すると数円ずれることがあります。

賃金の構成固定部分の単価歩合部分の単価深夜割増の合計計算過程
固定給のみ(27万円)1,647円29,6471,647 × 0.25 × 72
固定8割(21.6万円)+歩合2割(5.4万円)1,329円321円29,715(1,329 + 321) × 0.25 × 72
固定6割(16.2万円)+歩合4割(10.8万円)1,012円643円29,783(1,012 + 643) × 0.25 × 72

3パターンの差は100円ほど(分母170時間と168時間の違い)で、月の賃金が同じなら深夜割増もほぼ同じが本来の姿です。 歩合部分に割増が付いていなければ、歩合2割で5,786円、歩合4割で11,571円が毎月抜け落ちます。

けんじさん流チェック: デジタコと明細を突き合わせる

デジタコ(デジタル式運行記録計)には走行時刻が客観的に残り、車両総重量7トン以上または最大積載量4トン以上の事業用自動車では記録の1年間保存が義務です(貨物自動車運送事業輸送安全規則9条)。

  1. 明細の支給欄を「固定」「歩合」「割増」に分ける

    「基本給」「無事故手当」「運行手当(定額)」は固定、「歩合給」「売上歩合」「運行手当(距離・件数比例)」は歩合、「深夜割増」「深夜手当」「時間外手当」は割増。

  2. デジタコの記録から22時〜翌5時の稼働を拾う

    1か月分の運行記録で22:00〜翌5:00にかかった時間(休憩・休息を除く。荷待ち・手待ちは含める)を合計します。デジタコの走行記録だけでは停車中が荷待ちか休憩かを判別できないため、運行日報・作業記録・入退場記録と照合して確定します。このモデルなら6時間×12回=72時間。

  3. 明細の「深夜」の行と時間数を見比べる

    1か月合計の30分未満切り捨て・30分以上切り上げは認められますが、日ごとに15分未満などを切り捨てる処理は労働基準法違反とされています(東京労働局)。

  4. 単価を逆算して、歩合分と手当分が入っているかを見る

    「深夜割増 ÷ 深夜時間 ÷ 0.25」が固定給だけを170時間で割った単価(固定のみモデルなら 270,000 ÷ 170 = 約1,588円。固定8:歩合2のモデルなら 216,000 ÷ 170 = 約1,271円)に一致し、無事故手当や歩合を含めた単価(約1,647円・約1,329円+約321円)より低いなら、無事故手当や歩合が算定基礎から漏れている可能性があります。

差が埋まらないときの相談先(状況別)

  • 時間数がデジタコと合わない: 運行管理者と給与担当に月ごとの差(例: デジタコ72時間・明細64時間)を示して理由を聞き、賃金規程の該当条文を見せてもらいます。
  • 歩合分・手当分に割増が付いていない、または説明がつかない: 勤務先を管轄する労働基準監督署(厚生労働省「全国労働基準監督署の所在案内」で検索)に、 デジタコの写し・明細・賃金規程を持って相談します。平日日中に行けなければ「労働条件相談ほっとライン」(厚生労働省委託・平日夜間と土日祝の電話相談)があります。 賃金請求権の時効は5年(経過措置により当分の間3年)です(労働基準法115条)。

自分の条件で計算するには

夜間便の回数や時間帯、手当の額は会社ごとに違います。夜勤手取り計算ツールなら、 自分の勤務パターン(開始・終了時刻、休憩時間)と手当を登録するだけで、 深夜割増込みの月間手取りの目安を確認できます。

あなたの手取りはいくら?

シフトをタップで置くだけ。登録不要で今月の手取りを予測できます。

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よくある質問

歩合給(出来高払制)でも深夜割増は付きますか?

付きます。一般的な整理では、賃金算定期間の歩合給総額をその期間の総労働時間で割って時間単価を出し、深夜労働(22:00〜翌5:00)にはその25%分を上乗せして支払います(労働基準法施行規則19条)。固定給部分とは計算方法が異なりますが、「歩合給だから深夜割増はない」ということにはなりません。具体的な計算方法は勤務先の賃金規程により異なります。

拘束時間と労働時間は何が違いますか?

拘束時間は始業から終業までの時間(労働時間+休憩時間)で、改善基準告示が規制する対象です。トラックの場合、1日の拘束時間は原則13時間・上限15時間。ただし宿泊を伴う長距離貨物運送(1週間の運行がすべて一の運行の走行距離450km以上の貨物運送で、一の運行における休息期間が住所地以外の場所となる場合)では、条件つきで週2回まで16時間まで延長できる例外があります。勤務終了後の休息期間は継続11時間以上を基本とし9時間を下回らない、と定められています(2024年4月適用)。一方、深夜割増などの割増賃金は労働基準法37条に基づき、休憩を除いた実労働時間に対して計算します。

荷待ち(手待ち)の時間は深夜割増の対象になりますか?

手待ち時間(荷待ち等)は、改善基準告示の解説資料でも拘束時間のうち「労働時間」側に分類されており、休憩時間とは区別されています。労働時間であれば、22:00〜翌5:00に重なった分は深夜割増(+25%)の計算対象に含めるのが原則です。ただし、その時間に業務から完全に解放され自由に利用できたかどうかで扱いが分かれるため、個別の判断は勤務実態と賃金規程によります。

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出典・参考資料

※ 本記事および紹介ツールの計算結果は概算であり、実際の給与は勤務先の規定によります。

※ 改善基準告示・歩合給の割増賃金に関する記述は一般的な整理であり、個別の勤務実態・ 賃金規程により異なります。税・社会保険に関する記述も概算・一般論であり、 個別事情により異なります。正確な内容は勤務先または専門家にご確認ください。