解説記事
夜勤の税金は高くなる?
所得税・住民税の仕組みと手取りへの影響
2026.07.14 更新 ・ 読了 約5分
「夜勤手当が増えたら税金も増えて、結局手取りはあまり変わらないのでは」と感じたことはありませんか。 結論から言うと、夜勤手当・深夜手当は非課税ではなく、給与所得として所得税・住民税の対象になります。 ただし所得税は稼ぐほど税率が上がる累進課税のしくみなので、手当が増えたことで手取りの増加分がゼロになることはありません。この記事では月給28万円+夜勤手当3万円という 具体的なモデルで、源泉徴収税額表をもとにした概算を示します。
夜勤手当・深夜手当は非課税ではない
所得税法28条は、給与所得を「俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与」に 係る所得と定義しており、名称にかかわらず労働の対価として支払われる手当は原則すべて給与所得に含まれます。 また所得税法9条は非課税とされる所得を限定列挙していますが、そこに夜勤手当や深夜手当は含まれていません (非課税となるのは一定額までの通勤手当など、法令で個別に定められたものに限られます)。 つまり、夜勤手当・深夜割増賃金は基本給と合算した「その月の給与総額」として、 社会保険料や所得税・住民税の計算の基礎になります。
所得税は「稼ぐほど税率が上がる」累進課税
国税庁タックスアンサー No.2260(所得税の税率)によれば、所得税は課税所得の金額に応じて 5%から45%まで7段階に区分される超過累進税率です。金額が大きくなるほど、その超えた部分にだけ 高い税率がかかる仕組みのため、「手当が増えた分がまるごと高い税率に置き換わる」わけではありません。 毎月の給与から天引きされる源泉徴収税額も、この累進的な考え方をもとにした「給与所得の源泉徴収税額表」 (月額表)で決まります。
源泉徴収税額表(月額表)の仕組み
国税庁「給与所得の源泉徴収税額表」(月額表・令和8年分)は、その月の社会保険料等控除後の給与額を 一定の幅(おおむね3,000円刻み)の行にあてはめ、「扶養親族等の数」の列と交差させて税額を求める 階段状の表です。同じ給与額でも扶養人数が多いほど税額は下がります。例えば社会保険料控除後の給与が 230,000円以上233,000円未満(甲欄)の場合、扶養親族等の数が0人なら5,460円、1人なら3,850円、 2人なら2,240円、3人なら610円が目安の税額です。このように「1段の値上がりで税額が数百円上がる」 階段構造になっている点が、手取り計算のポイントです。
モデルケース:月給28万円+夜勤手当3万円で源泉徴収額はどう変わるか
月給(基本給)28万円の人が、夜勤手当3万円を加えて月31万円になったケースで、 社会保険料の本人負担を概算15%として社会保険料等控除後の給与額を求め、 源泉徴収税額表(月額表・甲欄・扶養親族等の数0人)にあてはめて概算します。
| 項目 | 基本給のみ(28万円) | 夜勤手当込み(31万円) |
|---|---|---|
| 給与総額 | 280,000円 | 310,000円 |
| 社会保険料控除後の給与(概算15%控除) | 238,000円 | 263,500円 |
| 該当する行 | 236,000円以上239,000円未満 | 263,000円以上266,000円未満 |
| 源泉徴収税額の目安(甲欄・扶養0人) | 5,680円 | 6,650円 |
源泉徴収税額の増分は 6,650円 − 5,680円 = 約970円 です。給与総額の増加分3万円のうち、 社会保険料の増加分(概算4,500円)と所得税の増加分(約970円)を差し引いても、手取りは概算で約24,530円増える計算になり、増加分の約8割は手取りに残ります。 なお上の税額は扶養親族等の数0人(独身・扶養なし)の場合の目安であり、 扶養人数や年度によって金額は変わります。
「手当が増えても手取りがゼロになる」ことはない
累進課税では税率が上がるのはあくまで「超えた部分」だけであり、日本の所得税の最高税率は45%です。 理論上どれだけ税率区分が上がっても、手当の増加額のうち税金として引かれるのは一部にとどまり、 残りは必ず手取りの増加として反映されます。上のモデルケースでも、夜勤手当3万円の増加に対して 税・社会保険料の増加は合計で約5,470円にとどまり、約8割が手取りに残っていることが数値で確認できます。 「夜勤手当が増えると損」というのは誤解であり、正しくは「増えた分がすべて手取りになるわけではない」 という理解が実態に近いといえます。
住民税は今月ではなく翌年度に反映される
所得税が当月の給与から源泉徴収されるのに対し、住民税(市区町村民税・道府県民税)は 前年1年間の所得をもとに税額が計算され、翌年度(6月〜翌5月)にわたって毎月の給与から 特別徴収される仕組みです(地方税法に基づく賦課課税)。そのため、今月増えた夜勤手当が 住民税として給与から引かれるのは翌年度以降になり、今月の給与明細にはすぐには反映されません。
正確な税額は年末調整・確定申告で確定する
毎月の源泉徴収はあくまで概算の前払いです。実際の所得税額は、年末調整(年の途中で他社へ転職した場合や 副業がある場合は確定申告)で、1年間の給与総額・各種控除(社会保険料控除・扶養控除・生命保険料控除など) を反映して初めて確定します。年間を通じて夜勤の回数が多かった月・少なかった月がある場合、 最終的な税額は月々の源泉徴収額の単純合計とは一致しないことがあります。
自分の手取りイメージをつかむには
夜勤手取り計算ツールでは、月給・シフト・夜勤手当を入力すると、 社会保険料と源泉所得税の概算控除(簡易な源泉税率をもとにした概算計算)を差し引いた 月間の手取りイメージを確認できます。扶養人数などの個別条件までは反映できない簡易計算のため、 「だいたいの金額感」をつかむ用途にお使いください。正確な税額は年末調整・確定申告、 または給与明細・勤務先の給与担当にご確認ください。登録不要で、入力したデータはお使いの端末内にのみ保存されます。
よくある質問
- 夜勤手当・深夜手当は非課税ですか?
- いいえ、非課税ではありません。所得税法上、夜勤手当・深夜手当は名称にかかわらず労働の対価として支払われる給与所得に含まれ、基本給と合算した給与総額として社会保険料・所得税・住民税の計算対象になります。非課税となるのは一定額までの通勤手当など、法令で個別に限定列挙されたものに限られます。
- 夜勤手当が増えると、増えた分がほとんど税金で消えますか?
- 所得税は課税所得に応じて5%〜45%の税率が段階的に上がる超過累進課税のため、増えた金額が丸ごと高い税率に置き換わることはありません。本記事のモデルケース(月給28万円+夜勤手当3万円)では、社会保険料(本人負担の目安15%前後)と所得税の増加分を差し引いても、増加額の約8割は手取りに残る計算になります。
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※ 本記事および紹介ツールの計算結果は概算であり、実際の給与は勤務先の規定によります。
※ 税額に関する記述は国税庁公表資料に基づく概算・一般論であり、扶養人数・各種控除の有無・年度改定などの 個別事情により実際の金額は異なります。正確な税額は最新の国税庁公表資料または税務署・税理士にご確認ください。