解説記事

固定残業代(みなし残業)を超えた分はいくら?
超過分の計算と深夜・休日の扱い
公開日 ・ 最終更新日 ・ 読了 約13分
執筆: 夜勤ツールズ編集部
固定残業代(みなし残業代)は「何時間働いても残業代はこれだけ」という意味ではなく、決められた時間を超えた分は追加で支払う必要があるとされています。 超過分は、固定残業代が対象とする区分(多くは時間外)ごとに「その区分の法定の額 − 固定残業代」(マイナスなら0円)を出し、対象外の深夜・法定休日の割増をその外で足して確かめます。
この記事のポイント
- 固定残業代の時間を超えたら?超えた時間の分は追加で支払う必要があるとされています。基礎時給1,500円・30時間分の固定残業代で40時間働いた月は、差額18,750円です。 ※本文で読む
- 深夜や休日も固定残業代に含まれる?含めるなら、契約で何の割増を何時間分・いくら含むかを示す必要があるとされています。含まれていなければ深夜帯は+25%、法定休日は+35%を別に計算します。時間外が固定残業代の範囲内の月でも、深夜帯8時間なら+3,000円です。 ※本文で読む
- 自分の明細で確かめるには?契約書で「何時間分・いくら・何を含むか」を確かめ、勤務記録の実時間で区分ごとの法定の額を出して、対象の区分だけを固定残業代と比べます。 ※本文で読む
- 固定残業代の額そのものが足りないことは?あります。30時間分として45,000円なら、30時間ちょうどの月でも法定額との差11,250円が不足になります。 ※本文で読む
→ 月給と実際の残業時間から、残業代の総額を計算する(無料・登録不要)
求人票・契約書の「みなし残業」の読み方(書かれるべき3点)
固定残業代は、一定時間分の時間外労働などに対する割増賃金を、実際の残業時間にかかわらず毎月定額で支払う賃金の決め方です。法律に専用の条文はなく、 労働基準法37条の割増賃金を前もって定額で払う方法の1つとして扱われています(求人票の「みなし残業」もふつうはこれを指し、みなし労働時間制とは別物です。FAQ参照)。
厚生労働省・労働局・ハローワークの資料は、固定残業代を求人で示すときに次の3点をすべて明示するよう求めています。
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業代に関する労働時間数と金額などの計算方法(例: 時間外労働の有無にかかわらず、30時間分の時間外手当として56,250円を支給)
- 固定残業時間を超える時間外労働、休日労働、深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨
固定残業代は決められた時間までの分の前払いで、「何時間働いても定額」という説明は3点目と合いません。固定残業代として有効に扱われるかは、 通常の賃金の部分と割増賃金の部分を区別できるかなど個別の事情で判断されるため、この記事では扱いません。
超えた分はいくら?(残業時間別の比較表)
モデルは、基本給255,000円(固定残業代を除く)・月平均所定労働時間170時間で基礎時給1,500円、固定残業代は時間外30時間分の56,250円です。 固定残業代は時間外だけを対象とし、深夜・法定休日は含まない定めとします。
| その月の勤務 | 法定の額(計算過程) | 追加で払われる目安 |
|---|---|---|
| 時間外25時間 | 1,500円 × 1.25 × 25 = 46,875円 | 固定残業代の範囲内なので追加なし |
| 時間外25時間(うち深夜帯8時間) | 深夜割増 1,500円 × 0.25 × 8 = 3,000円 | 0円 + 3,000円 = 3,000円(深夜割増は対象外) |
| 時間外40時間 | 1,500円 × 1.25 × 40 = 75,000円 | 75,000円 − 56,250円 = 18,750円 |
| 時間外40時間(うち深夜帯8時間) | 上の額+深夜割増3,000円 | 18,750円 + 3,000円 = 21,750円 |
| 時間外30時間+法定休日8時間 | 時間外は固定残業代の範囲内。法定休日 1,500円 × 1.35 × 8 = 16,200円 | 16,200円(法定休日の分をまるごと) |
| 時間外70時間(60時間超が10時間) | 1,500円 ×(70 × 1.25 + 10 × 0.25)= 135,000円 | 135,000円 − 56,250円 = 78,750円 |
40時間の月は、超えた10時間の分 1,500円 × 1.25 × 10 = 18,750円が差額と一致します(固定残業代が30時間分の法定額とちょうど同じ場合だけ)。
2行目は総額49,875円が固定残業代より少ない月ですが、固定残業代は時間外だけが対象なので、深夜割増3,000円は時間外の余りで相殺せず別に支払う必要があるとされています。
総額から固定残業代を引く
0円
深夜割増まで相殺してしまう
区分ごとに比べる
3,000円
時間外0円+深夜割増3,000円
基礎時給1,500円。固定残業代56,250円は時間外30時間分だけが対象の定めの場合。
不足額は区分ごとに出す(計算過程)
次の3本の式で不足額の目安を出せます(1円未満は四捨五入)。固定残業代と比べるのは、固定残業代が対象とする区分の額だけです。
不足額の式(基本給255,000円・月平均所定170時間・固定残業代は時間外30時間分のモデル)
式1 基礎時給 = (基本給 + 算定対象の手当)÷ 月平均所定労働時間(固定残業代と法定の除外賃金は入れない)→ モデルは手当なしで 255,000 ÷ 170 = 1,500円
式2 区分ごとの法定の額: 時間外 = 基礎時給 × 1.25 × 時間(月60時間超の部分は × 1.5)/ 深夜割増 = 基礎時給 × 0.25 × 深夜帯の時間 / 法定休日 = 基礎時給 × 1.35 × 時間
式3 不足額 = max(0, 対象の区分の法定額 − 固定残業代)+ 対象外の区分の額 → 時間外40時間(うち深夜帯8時間)なら max(0, 75,000円 − 56,250円)+ 3,000円 = 21,750円
max(0, …) は、時間外が固定残業代の時間に届かない月は不足を0円にし、余りを深夜・休日の分に回さないという意味です。 契約が複数の区分(例: 時間外と深夜)を対象にしているなら、その区分の法定額を合計してから比べます。
式1の分子に固定残業代を入れないのは、固定残業代が割増賃金として払われる部分で、通常の労働時間の賃金ではないからです。家族手当・通勤手当・住宅費に応じて算定される住宅手当などの法定の除外賃金も除きます (労働基準法37条5項・同法施行規則21条)。一律の住宅手当や職務手当・資格手当などは分子に含めます。基本給だけで割ると、不足額を少なく見積もります。
固定残業代の額そのものが足りない例も式3で確かめられます。30時間分として45,000円が払われている場合、30時間ちょうど働いた月の法定額は56,250円なので、56,250円 − 45,000円 = 11,250円が不足になります。固定残業代の額が法定の計算で出した割増賃金の額を下回るときは、差額を支払う必要があるとされています。
式2の60時間超の部分をくわしく読む
深夜・法定休日・月60時間超は固定残業代の外?
固定残業代が時間外の分だけを対象にしている場合、深夜帯(22時〜翌5時)の実働と法定休日の労働は、固定残業代とは別に計算します。 深夜・休日も含めるなら、何の割増を何時間分・いくら含むかが契約で示されている必要があるとされています(厚生労働省・労働局・ハローワークの資料)。
- 深夜帯: 時間外かどうかに関係なく、22時〜翌5時の実働に基礎時給の+25%以上(労働基準法37条4項)。時間外と重なる時間は+50%以上です。
- 法定休日: 法定休日の労働は時間外とは別の区分で、+35%以上。8時間を超えても時間外割増は重ねません。
- 月60時間超: 固定残業代の時間が60時間より短ければ、60時間を超えた部分は固定残業代の時間の外にあたり、+50%以上で計算します。
「夜勤手当」に深夜割増を含めると定めている職場の確かめ方は、「深夜残業は何倍?」「夜勤専従の手取りはいくら?」の記事で扱っています。
明細の「固定残業超過手当」を照らし合わせる5ステップ
雇用契約書・労働条件通知書の固定残業代の条文を写す
「固定残業手当」「定額時間外手当」「業務手当」など名称はさまざまです。金額、何時間分か、何の割増を含むかを書き出します。基本給と算定対象の手当、月平均所定労働時間を確かめる
明細の「基本給」に職務手当・資格手当など算定対象の手当を足し、月平均所定労働時間(年間の所定労働時間 ÷ 12)で割ります(式1)。固定残業代と法定の除外賃金は足しません。勤怠記録で、その月の実時間を数える
法定時間外(1日8時間・週40時間超)、法定休日、深夜帯(22時〜翌5時)の実働を、1分単位で別々に合計します。区分ごとの法定の額を出し、対象の区分だけを固定残業代と比べる
式2で区分ごとの法定額を出し、対象の区分(例: 時間外)だけ固定残業代を引いてマイナスなら0円に。対象外の深夜・休日の分は全額を足します(式3)。明細の「超過分」「時間外手当」の行と照らし合わせる
「固定残業超過手当」「時間外手当(超過分)」などの別の行に出ることが多いです。行がない、または額が式3と大きく違うときは次の節へ。
賃金規程の書き方で計算が変わる4つの項目
| 項目 | 計算のどこが変わるか | 確認する書類 |
|---|---|---|
| 固定残業代に含まれる範囲 | 式3で固定残業代と比べる区分 | 雇用契約書・賃金規程 |
| 所定7時間30分などの法定内残業 | 割増を付けるか、固定残業代の時間に数えるか | 就業規則・賃金規程 |
| 法定休日がどの日か | +35%が付く日 | 就業規則の休日の条 |
| 変形労働時間制の有無 | 時間外に当たるかの判定 | 労働条件通知書と勤務表 |
超過分が払われていないときの聞き方と相談先
- 計算方法の説明を受けたい: 契約書・勤怠記録・明細をそろえ、給与担当に「◯月は時間外40時間でした。30時間分を超えた10時間分はどの行ですか」と数字を添えて聞きます。
- 説明がつかない、または支払われない: 同じ資料を持って、勤務先を管轄する労働基準監督署に相談できます(所在は厚生労働省の案内で探せます)。 賃金の時効は当分の間3年です。請求の期限は「夜勤手当が支払われないのは違法?」の記事にまとめています。
残業代の計算ツールで区分ごとの額を出す
残業代の計算に月給(固定残業代を除き、算定対象の手当を含む)と「③ 法定時間外の合計」「④ ③のうち深夜帯」「⑤ 法定休日に働いた時間」「⑥ ⑤のうち深夜帯」を入れると、区分ごとの額が行に分かれて出ます。 固定残業代が時間外だけの定めなら、「時間外の基礎分」と「時間外割増」の合計から固定残業代を引き(マイナスなら0円)、深夜割増と法定休日の行はそのまま足します。 モデルの40時間(うち深夜帯8時間)なら21,750円です。合計欄からまとめて引くと、対象外の分まで相殺してしまいます。
ツールの深夜割増は④と⑥の分だけで、所定労働時間内の深夜帯の深夜割増(基礎時給 × 25% × 時間)は出ないため別に足します。固定残業代の精算そのものはしないため、引き算は自分で行います。
よくある質問
固定残業代の時間より残業が少なかった月は、固定残業代が減らされますか?
固定残業代は、決められた時間に満たない月も定額で支払う前提で設けられるのが一般的です。厚生労働省の資料の記載例でも、固定残業代は「時間外労働の有無にかかわらず」支給するものとして示されています。少なかった月に減額する定めになっているかは、雇用契約書・賃金規程の固定残業代の条文で確認してください。
固定残業代に深夜割増も含まれているかは、どこで分かりますか?
雇用契約書・労働条件通知書・賃金規程の固定残業代の条文に、何時間分の何の割増(時間外・休日・深夜)を含むかが書かれているはずです。書かれていなければ、給与担当に「固定残業代は時間外何時間分で、深夜・休日の分を含みますか」と聞きます。深夜帯(22時〜翌5時)の実働には、時間外かどうかにかかわらず25%以上の深夜割増が必要です。
超過分が払われていない場合、何年前の分までさかのぼれますか?
賃金の請求権の時効は、労働基準法115条で5年(当分の間は3年)とされています。各月の給与の支払日から数えるため、古い月の分から順に請求できなくなります。早めに勤務の記録と明細をそろえ、勤務先か労働基準監督署に相談してください。
固定残業代が付いているのに、残業代の計算ツールは使えますか?
使えます。残業代の計算に、月給(固定残業代を除いた、割増の基礎に入る賃金)と、その月の「③ 法定時間外の合計」「④ ③のうち深夜帯」「⑤ 法定休日に働いた時間」「⑥ ⑤のうち深夜帯」を入れると、区分ごとの額が内訳で出ます。固定残業代が時間外だけを対象とする定めなら、内訳の「時間外の基礎分」と「時間外割増」の合計から固定残業代を引き(マイナスなら0円)、深夜割増と法定休日の行はそのまま足した額が不足額の目安です。総額からまとめて引くと、対象外の深夜・休日の分まで固定残業代で相殺してしまうので注意してください。所定労働時間内の深夜帯の深夜割増は入力欄がなくツールでは出ないため、基礎時給 × 25% × 時間で別に足します。
「みなし残業」と「みなし労働時間制」は同じものですか?
別の仕組みです。みなし労働時間制は、事業場外労働(労働基準法38条の2)や裁量労働制(38条の3・38条の4)で、働いた時間をどう数えるかの制度です。固定残業代(みなし残業代)は、割増賃金を前もって定額で払う方法で、働いた時間は通常どおり数えます。求人票の「みなし残業◯時間」は、ふつう固定残業代のことを指しています。
関連記事
出典・参考資料
- 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「固定残業代を賃金に含める場合は、募集要項や求人票などに明示を」(外部サイトが新しいタブで開きます)発行主体: 厚生労働省・確認日: 2026-11-06
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」労働者向けQ&A(賃金 Q11 基本給に含めた割増賃金)(外部サイトが新しいタブで開きます)発行主体: 厚生労働省・確認日: 2026-11-06
- 労働基準法(37条 割増賃金・38条の2〜38条の4 みなし労働時間制・115条 時効)(外部サイトが新しいタブで開きます)発行主体: e-Gov法令検索(所管: 厚生労働省)・確認日: 2026-11-06
- 労働基準法施行規則(19条: 基礎賃金の計算、20条: 深夜との重複時の率、21条: 算定基礎から除外する賃金)(外部サイトが新しいタブで開きます)発行主体: e-Gov法令検索(所管: 厚生労働省)・確認日: 2026-11-06
- 厚生労働省「2023年4月1日から 月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」(中小企業も50%・法定休日の労働は60時間に含めない)(外部サイトが新しいタブで開きます)発行主体: 厚生労働省・確認日: 2026-11-06
- 厚生労働省「全国労働基準監督署の所在案内」(外部サイトが新しいタブで開きます)発行主体: 厚生労働省・確認日: 2026-11-06
※ 本記事および紹介ツールの計算結果は概算であり、実際の給与は勤務先の規定によります。
※ 本記事は制度の一般的な説明で、固定残業代の扱いや支払いに不足があるかは、契約・賃金規程・勤務の実態などの個別事情により異なります。 判断に迷うときは、勤務先を管轄する労働基準監督署や、弁護士・社会保険労務士にご相談ください。