解説記事

残業の15分単位の切り捨ては違法?
1分単位の原則と月合計30分の端数処理
公開日 ・ 最終更新日 ・ 読了 約12分
執筆: 夜勤ツールズ編集部
残業を1日ごとに15分単位で切り捨て、その分の賃金を払わない処理は、労働基準法違反とされています(厚生労働省・東京労働局の資料)。 労働時間は1分単位で数えるのが原則で、認められている端数処理は1か月の合計時間などに限られます。 この記事では、どこまでが認められる処理か、切り捨てで月いくら変わるか、給与明細での確かめ方を計算例で整理します。
この記事のポイント
- 1日ごとの15分未満の切り捨ては?1日ごとに一定時間に満たない労働時間を一律に切り捨て、その分の賃金を払わないことは労働基準法違反とされています。 ※本文で読む
- 認められる端数処理は?1か月の時間外・休日・深夜それぞれの合計の1時間未満の端数を、30分未満切り捨て・30分以上切り上げにする処理などです。 ※本文で読む
- 切り捨てで月いくら変わる?毎日14分の残業が20日なら月4時間40分。時間外1時間1,691円のモデルで、1日ごとに切り捨てると7,891円が払われません。 ※本文で読む
- 自分の明細で確かめるには?タイムカードの1日ごとの残業を分単位で合計し、明細の時間外の時間数と比べます。 ※本文で読む
→ 1分単位で合計した残業時間から残業代を計算する(無料・登録不要)
15分単位の切り捨ては違法?(1分単位の原則)
厚生労働省のリーフレット「労働時間を適正に把握し正しく賃金を支払いましょう」は、労働時間を毎日適正に把握し、それに基づいて賃金を支払う必要があるとし、 1日ごとに一定時間に満たない労働時間を一律に切り捨て、その分の賃金を支払わないことは労働基準法違反になると示しています。東京労働局も同じ表題の資料で同じ考え方を示しています。
根拠になるのは、賃金はその全額を支払うとする労働基準法24条と、時間外・休日・深夜の割増賃金を定める37条です。 働いた時間の一部を毎日切り捨てれば、その分の賃金と割増が払われないことになります。
- 勤怠システムの設定で、1日の時間外のうち15分未満を一律に切り捨てる
- 終業時刻を30分単位で丸め、29分までの残業を毎日なかったことにする
- 「残業は30分以上から申請」と決め、それより短い残業を申請させない
上のような運用は、いずれも1日ごとの端数を切り捨てて賃金を払わない形になるため、問題になり得ます。 一方、1日の端数を切り上げて多めに払う扱いは、賃金の不払いにはなりません。
認められている端数処理(通達が示す3つ)
鹿児島労働局のQ&Aは、常に労働者に不利になるものではなく事務を簡便にする目的のものとして、次の3つの端数処理を労働基準法24条・37条の違反としては扱わないとされている、と説明しています。この扱いは、一般に昭和63年3月14日の通達(基発150号)によるものとして知られています。
1か月の合計時間の端数
1か月の時間外労働・休日労働・深夜業それぞれの合計時間に1時間未満の端数があるとき、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる。1時間あたりの賃金額・割増賃金額の端数
1時間あたりの賃金額と割増賃金額に円未満の端数があるとき、50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げる。1か月の割増賃金の総額の端数
1か月の時間外・休日・深夜それぞれの割増賃金の総額に1円未満の端数があるとき、2と同じ方法で処理する。
どれも「切り捨てと切り上げの両方」を行う処理で、時間の切り捨てが認められているのは1か月の合計に対してだけです。1日ごとの時間を切り捨てる処理は含まれていません。
切り捨てで月いくら変わる?(3ケースの比較表)
モデルは月給230,000円・月平均所定労働時間170時間で、時間外1時間あたりの賃金(基礎分+割増25%)は1,691円です。 1日あたりの残業の分数と日数を変えた3つのケースで、端数処理の方法ごとの月の時間外の賃金を比べます(モデルケース。条件は表のとおり)。
| ケース | 1日ごとに15分未満切り捨て(違反とされる) | 1分単位(原則) | 月合計の30分ルール(認められる) |
|---|---|---|---|
| ケースA: 毎日14分×20日 | 0時間 → 0円 | 4時間40分 → 7,891円 | 5時間 → 8,455円 |
| ケースB: 毎日37分×20日 | 10時間 → 16,910円 | 12時間20分 → 20,856円 | 12時間 → 20,292円 |
| ケースC: 毎日8分×22日 | 0時間 → 0円 | 2時間56分 → 4,960円 | 3時間 → 5,073円 |
ケースAは、毎日の残業が15分に届かないため、1日ごとに切り捨てると月の時間外が0時間になり、1分単位なら払われる7,891円が消えます。 1年続けば94,692円、時効の目安の3年(36か月)では284,076円になります。
1日ごとに15分未満を切り捨て
0円
時間外0時間として計算(違反とされる)
1分単位で合計(原則)
7,891円
時間外4時間40分として計算
時間外1時間あたり1,691円のモデル(月給230,000円・月平均所定170時間)。
ケースBのように、月合計の30分ルールでは1分単位より少なくなる月もあります(12時間20分の20分を切り捨て)。それでも認められているのは、端数が30分以上の月は切り上げになり、 常に働く人に不利になるわけではないからです。ケースCは切り上げになる例です。
計算過程(1時間あたりの額と月の合計)
時間外1時間あたりの額と、ケースAの月の額(月給230,000円・月平均所定170時間)
式1 基礎時給 = 月給 ÷ 月平均所定労働時間 → 230,000 ÷ 170 = 1,352.94円(ここでは丸めない)
式2 時間外1時間あたり = 基礎時給 × 1.25 → 1,352.94 × 1.25 = 1,691.18円 → 50銭未満切り捨て(時間単価を丸めるのはここだけ)で 1,691円
式3 1分単位の月の額 = 式2 × 合計分 ÷ 60 → 1,691 × 280 ÷ 60 = 7,891円(1円未満は50銭以上切り上げ)
式4 1日ごとに15分未満を切り捨てた月の額 → 毎日14分は0分になり、0円
時間単価を丸めるのは式2だけで、式1の基礎時給(1,352.94円)は丸めずに1.25を掛けています。基礎時給を先に1,353円に丸めてから掛ける勤務先もあり、このモデルでは 1,353 × 1.25 = 1,691.25円 → 1,691円で同じ額になりますが、月給によっては1円ずれることがあります。月給には、家族手当・通勤手当・住宅費に応じて算定される住宅手当などの法定の除外賃金は入れません(労働基準法37条5項)。 モデルは深夜帯にかからない残業で計算しており、深夜帯の残業に重なる割増の倍率は「深夜残業は何倍?」の記事で扱っています。
月合計の30分ルールが「それぞれの合計」にかかる意味をくわしく読む
「15分単位は会社の自由」「30分未満は切り捨てOK」は本当?
| よく聞く言い回し | 実際の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 「15分単位の切り捨ては会社の自由」 | 1日ごとに一定時間に満たない労働時間を一律に切り捨て、その分の賃金を払わないことは労働基準法違反とされています | 厚労省・東京労働局のリーフレット「労働時間を適正に把握し正しく賃金を支払いましょう」 |
| 「30分未満の切り捨てはどこでも認められている」 | 認められているのは1か月の合計時間の端数で、しかも30分以上は切り上げる処理とセットです。1日ごとの30分未満の切り捨ては当たりません | 鹿児島労働局Q&A「Q10 残業手当の端数処理」 |
| 「毎日数分だから大した額ではない」 | ケースAでは月7,891円、3年で284,076円。時効は当分の間3年です | 労働基準法115条・附則143条 |
タイムカードと明細の時間数を突き合わせる5ステップ
1か月分の出退勤の記録を集める
タイムカード・ICカード・勤怠システムの画面を撮影します。会社の記録が手元にない日は、自分でつけた出退勤のメモも使えます。1日ごとの残業を分単位で書き出す
例: 「10/3 所定の終業17:30(実働8時間)、退勤18:14 → 法定時間外44分」。法定時間外(1日8時間・週40時間超)の分と、所定を超えたが8時間以内の分(法定内残業)を分けます。月の合計を出す
分単位で足し、時間と分にします(例: 合計280分=4時間40分)。休日労働・深夜帯の時間は別に合計します。明細の「時間外」の時間数と比べる
明細の時間数が合計より少なく、日数 × 15分(や30分)程度ずつずれているなら、1日ごとの切り捨てを疑います。端数が1時間未満だけのずれなら、月合計の30分ルールのこともあります。賃金規程の端数処理の条文を読む
「労働時間の端数」「時間外手当の計算」の条に、1日単位か1か月単位か、切り捨てだけか切り上げもあるかが書かれているかを確認します。
賃金規程・勤怠システムの設定で差が出る4つの点
- 端数処理の定め: 1か月単位の30分ルールを使うか、1分単位のまま計算するかは職場で違います。賃金規程の時間外手当の計算の条で確認します。
- 所定労働時間と法定内残業: 所定7時間30分の職場で8時間までの残業に割増を付けるかは賃金規程によります。ただし割増が付かない場合でも、働いた時間の賃金そのものは払われる必要があります。
- 勤怠システムの丸め設定: 打刻を15分・30分単位で丸める設定が残っている職場があります。総務・人事に「日次の丸め設定があるか」を聞くと早く分かります。
- 交代勤務の日またぎ: 夜勤が日付をまたぐ場合、残業の分数を暦日で分けて切り捨てていないかも確認します。日をまたぐ勤務の深夜帯の数え方は、夜勤手取り計算で確かめられます。
切り捨てを見つけたら、まず給与担当に数字で聞く
- 1〜2か月分のずれ: ステップ2の書き出しと明細を持って、給与担当に「◯月の時間外は記録では4時間40分、明細では0時間です。端数はどう処理していますか」と数字を添えて聞きます。設定ミスならその場で精算されることがあります。
- 長期間・職場全体で切り捨てが続いている: 出退勤の記録・明細・賃金規程の写しを持って、勤務先を管轄する労働基準監督署に相談できます(厚生労働省「全国労働基準監督署の所在案内」で探せます)。 請求の期限と相談先の比べ方は「夜勤手当が支払われないのは違法?」の記事にまとめています。
1分単位の合計で残業代を出す
残業代の計算に、月給・月平均所定労働時間と、1分単位で合計した時間外の時間を入れると、法定の最低の率での残業代が内訳つきで出ます。 4時間40分なら「4.67」のように時間に直して入れると、ツールが1分単位に四捨五入して280分として計算します。ツールは金額を行ごとに1円未満で四捨五入するため、勤務先の処理と数円ずれることがあります。
よくある質問
15分単位で切り上げる(多めに払う)のは問題ありませんか?
1日の端数を切り上げて、実際より多い時間分の賃金を払う扱いは、働いた分の賃金を払っていないことにはならないため、賃金不払いの問題にはなりません。問題になるのは、働いた時間を切り捨てて、その分の賃金を払わない場合です。
1か月の合計の30分未満切り捨ては、どの職場でも使えますか?
1か月の時間外労働・休日労働・深夜業それぞれの合計時間に1時間未満の端数があるとき、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる処理は、事務を簡便にする目的のものとして法違反としては扱わないとされています。切り捨てだけを行い切り上げをしない処理は、この扱いに当たりません。勤務先がどの処理をしているかは賃金規程で確認してください。
タイムカードの打刻と、会社が記録した終業時刻が違うときは?
労働時間は実際に働いた時間で数えます。打刻後に片付けや引き継ぎを続けていた場合など、記録と実際がずれているときは、日付と時刻、何をしていたかをメモに残し、給与担当にどちらの時刻で計算しているかを確認してください。説明がつかないときは労働基準監督署に相談できます。
切り捨てられていた分は、何年前までさかのぼれますか?
賃金の請求権の時効は、労働基準法115条で5年(当分の間は3年)とされています。各月の給与の支払日から数えるため、古い月の分から順に請求できなくなります。
関連記事
出典・参考資料
- 厚生労働省リーフレット「労働時間を適正に把握し正しく賃金を支払いましょう」(1日ごとの切り捨ての扱い)(外部サイトが新しいタブで開きます)発行主体: 厚生労働省・確認日: 2026-11-06
- 東京労働局「労働時間を適正に把握し正しく賃金を支払いましょう」(外部サイトが新しいタブで開きます)発行主体: 厚生労働省 東京労働局・確認日: 2026-11-06
- 鹿児島労働局「Q10 残業手当の端数処理は、どのようにしたらよいですか。」(24条・37条違反としては扱わない3つの端数処理)(外部サイトが新しいタブで開きます)発行主体: 厚生労働省 鹿児島労働局・確認日: 2026-11-06
- 労働基準法(24条 賃金の全額払い・37条 割増賃金・115条 時効)(外部サイトが新しいタブで開きます)発行主体: e-Gov法令検索(所管: 厚生労働省)・確認日: 2026-11-06
- 厚生労働省「全国労働基準監督署の所在案内」(外部サイトが新しいタブで開きます)発行主体: 厚生労働省・確認日: 2026-11-06
※ 本記事および紹介ツールの計算結果は概算であり、実際の給与は勤務先の規定によります。
※ 本記事は制度の一般的な説明で、勤務先の端数処理が法令に沿っているかは、賃金規程・勤務の記録などの個別事情により異なります。 判断に迷うときは、勤務先を管轄する労働基準監督署や、弁護士・社会保険労務士にご相談ください。