解説記事

夜勤の休憩・仮眠時間は労働時間?
給料が出る条件と休憩の最低時間
公開日 ・ 最終更新日 ・ 読了 約13分
執筆: 夜勤ツールズ編集部
夜勤中の仮眠や休憩が労働時間になるかは、「休憩」「仮眠」という呼び方では決まりません。 最高裁は、呼び出しや警報への対応を義務付けられ、労働から離れることが保障されていない仮眠時間を労働時間と判断しています。 この記事では、その判断の物差し、休憩の最低時間、労働時間になったときに深夜割増がどう変わるか、自分の職場で確かめる手順を整理します。
この記事のポイント
仮眠・休憩が労働時間になるかの物差し(判例とガイドライン)
労働基準法32条の「労働時間」は、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、就業規則や契約にどう書いてあるかではなく、実態から客観的に決まるとされています。 夜勤の仮眠について、この物差しを当てはめたのが大星ビル管理事件の最高裁判決(第一小法廷・平成14年2月28日)です。
この事件では、ビル管理の泊り勤務の中に連続7〜9時間の仮眠時間が設定されていました。従業員は仮眠室での待機と、警報や電話があればすぐに対応することを義務付けられていました。 判決は、実作業をしていない時間でも、労働から離れることが保障されていなければ指揮命令下にあると評価し、仮眠時間全体を労働時間と判断しました。
対応が必要になることが皆無に等しいなど、実質的に対応の義務がないと認められる事情があれば結論は変わり得る、という留保も示されています。
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)も、使用者の指示があれば即時に業務に従事することを求められ、 労働から離れることが保障されていない状態で待機している時間(いわゆる手待時間)は労働時間に当たるとしています。
判決の事案と判断の要点をくわしく読む
状況別の比較表(待機の義務・交代要員・呼び出し)
判決とガイドラインの物差しを、夜勤でよくある4つの状況に並べると次のとおりです。右端は「評価されやすい方向」で、実際の判断は職場の指示の内容と実態によります。
| 仮眠・休憩中の状況 | 物差しに当てはめると | 評価されやすい方向 |
|---|---|---|
| 仮眠室から離れられず、ナースコール・警報・電話が鳴ればすぐ対応する決まり | 対応の義務と場所の拘束がある(大星ビル管理事件と同じ型) | 労働時間 |
| 休憩中も持ち場で電話番を頼まれている | 指示があれば即時に業務に就く状態で待機している(手待時間) | 労働時間 |
| 交代要員がいて呼び出しの対応は別の人が担当し、休憩室で自由に過ごせる | 労働から離れることが保障されている | 休憩 |
| 休憩として扱われているが、その日は途中で呼ばれて30分対応した | 対応した30分は少なくとも労働時間。呼ばれたことで実際の休憩が34条の最低時間を下回れば、休憩が足りない状態になる | 対応分は労働時間 |
休憩の最低時間と3つの原則(34条)
休憩の長さは、拘束時間ではなく労働時間で決まります。最低限の時間と、与え方の原則は次のとおりです。
| 1回の勤務の労働時間 | 法律上の最低の休憩 | 夜勤での例 |
|---|---|---|
| 6時間以下 | なし(与えなくても違反ではない) | 22時〜翌4時の6時間勤務 |
| 6時間を超え8時間以下 | 45分 | 22時〜翌6時45分・休憩45分(労働8時間) |
| 8時間を超える | 1時間 | 16時〜翌9時の二交代(拘束17時間)でも最低は1時間 |
- 途中に与える: 勤務の始めや終わりにまとめて置く休憩は、34条の休憩になりません。
- 一斉に与える: 原則は全員同時ですが、病院・介護などの保健衛生業、運輸交通業、商業、接客娯楽業などは適用が除外されています(施行規則31条)。それ以外の業種でも労使協定があれば交代で取れます。
- 自由に利用させる: 休憩中の過ごし方は原則として本人の自由です。電話番や待機を指示されていれば、上の比較表のとおり休憩ではなくなる可能性があります。
仮眠が労働時間に当たる場合、その仮眠は休憩には数えられません。二交代の夜勤で休憩1時間・仮眠2時間なら、34条の休憩として数えられるのは1時間です。
仮眠が労働時間なら深夜割増はいくら変わる?(計算過程)
モデルとして、16時〜翌9時の二交代夜勤(拘束17時間)で、20時〜21時に休憩1時間、2時〜4時に仮眠2時間を取る勤務を置きます。 仮眠を休憩とみるか、労働時間とみるかで、実働と深夜帯の時間が次のように変わります。
仮眠の扱いで変わる時間と深夜割増(モデル)
式1 実働 = 拘束 − 休憩 − (休憩扱いの仮眠) → 仮眠が休憩なら 17 − 1 − 2 = 14時間、労働時間なら 17 − 1 = 16時間
式2 深夜帯の実働 = 22時〜翌5時の7時間 − 深夜帯の中の休憩・仮眠 → 仮眠が休憩なら 7 − 2 = 5時間、労働時間なら 7時間
式3 深夜割増の差 = 基礎時給 × 25% × 深夜帯の仮眠2時間 → 基礎時給1,500円なら 1回750円
| 基礎時給 | 1回あたりの深夜割増の差 | 月8回の差 |
|---|---|---|
| 1,100円 | 1,100 × 25% × 2時間 = 550円 | 4,400円 |
| 1,300円 | 1,300 × 25% × 2時間 = 650円 | 5,200円 |
| 1,500円 | 1,500 × 25% × 2時間 = 750円 | 6,000円 |
表は深夜割増の部分だけです。仮眠2時間が労働時間になった場合、その2時間に対して通常の賃金をどう払うかは労働契約の定めによるとされ、法定労働時間を超える部分があれば時間外割増の対象にもなります。 どこまでが時間外かは勤務先の所定労働時間の決め方(変形労働時間制の有無など)で変わるため、この記事では深夜割増の差だけを示しています。
基礎時給は月給制なら「月給 ÷ 月平均所定労働時間」で出します(家族手当・通勤手当など、法令で除外できる手当は月給から除きます)。円未満は四捨五入しています。
「寝ている時間は無給」「規則で休憩と決めれば休憩」は正しい?
- 「寝ている時間だから、仮眠に給料は出ない」 → 寝ているかどうかではなく、対応の義務と場所の拘束があるかで判断されます。待機と即時対応が義務付けられた仮眠時間は、労働時間と判断された最高裁判決があります。 根拠: 大星ビル管理事件・最高裁平成14年2月28日判決(裁判所ウェブサイト)。
- 「就業規則で『仮眠は休憩』と決めれば休憩になる」 → 労働時間かどうかは規則の書き方ではなく、指揮命令下にあるかという実態で客観的に決まるとされています。 根拠: 同判決、厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」。
- 「休憩中にコールを1回取っても、休憩は休憩のまま」 → 対応した時間は労働時間です。その結果、実際に取れた休憩が34条の最低(労働8時間超なら1時間)に届かなければ、休憩が足りない状態になります。 根拠: 労働基準法34条、同ガイドライン(手待時間)。
指示・記録・明細をそろえて自分の仮眠を確かめる手順
労働条件通知書と就業規則で、夜勤の「休憩時間」と仮眠の記載を写す
休憩が何分で何時から何時か、仮眠が「休憩」「労働時間」「仮眠時間(手当あり)」のどれとして書かれているかを見ます。仮眠・休憩中の指示を書き出す
仮眠場所から離れてよいか、PHS・コールの携帯を求められているか、対応を誰が担当するか。業務マニュアルや申し送りの文面があれば写しを取ります。仮眠・休憩中に対応した日時と内容を、その都度メモする
「3:10〜3:40 ナースコール対応」のように。勤怠システムに記録欄があればそこにも残します。給与明細の「深夜手当」の時間数と、勤務表から出した深夜帯の実働を比べる
上の式2で、仮眠を休憩として除いた時間か、含めた時間かを確かめます。深夜帯の実働×基礎時給×25%が明細の額と合うかも見ます。実態と扱いが合わないと感じたら、記録を持って人事・総務へ。説明がなければ労働基準監督署や総合労働相談コーナーへ
未払いの計算方法と請求できる期限は「夜勤手当が支払われないのは違法?」にまとめています。
仮眠手当・交代要員・宿直の許可で扱いが分かれる点
- 仮眠の扱いと手当: 労働時間として賃金を払う、休憩として扱う、仮眠手当を別に払うなど、賃金規程によって違います。賃金規程と給与担当で確認します。
- 休憩の与え方: 一斉付与の除外業種(保健衛生業など)か、労使協定で交代休憩にしているか。就業規則の休憩の条と労使協定で確認します。
- 夜間の人員配置: 交代要員がいて休憩中の対応を引き継げるかどうかで、実態が比較表のどの行に近いかが変わります。現場の責任者に配置表を確認します。
- 許可を受けた宿直かどうか: 労働基準監督署長の許可を受けた宿直(施行規則23条)は、通常の夜勤とは別の扱いです。許可の有無は人事・総務で確認できます。
ツールで休憩・仮眠をどう入れる?(近似になる場合)
夜勤の手取り計算ツールは、勤務パターンに入力した休憩時間を労働時間から差し引きます。仮眠を休憩として扱われている職場は、仮眠も休憩時間に含めて入力します。 仮眠が労働時間として扱われている職場は、仮眠を休憩に含めずに入力します。
深夜割増の時間は「休憩をとった時間帯」で決まりますが、選べるのは勤務パターンごとに1つ(深夜帯の中・外・わからない)だけです。 休憩が深夜帯の内と外に分かれる場合は「わからない」を選び、深夜帯の時間は比例配分の概算になります。
- 仮眠を労働時間とみる側(休憩1時間のみ・深夜帯の外)は、深夜帯の実働7時間がそのまま出ます。
- 仮眠も休憩とみる側(休憩3時間)は、深夜帯の外の休憩1時間と深夜帯の中の仮眠2時間が混ざるため、どれを選んでもモデルの5時間にはなりません。 「深夜帯の中」なら4時間、「わからない」なら比例配分で約5.8時間です。
そのため2通りを登録して並べても、上のモデルの1回750円の差はツールでは近似になり、そのままは再現されません。モデルの差は式3で確かめてください。 休憩も仮眠もすべて深夜帯の中にある勤務なら、「深夜帯の中」を選べば差はそのまま出ます。1回分だけを見るなら夜勤手当 早見計算でも試せます。
よくある質問
16時間夜勤の休憩は、法律上何分あればよいのですか?
労働基準法34条が定める最低限は、労働時間が8時間を超える場合に1時間です。16時間の勤務でも、法律上の最低は1時間のままで、勤務が長くなるほど増える定めはありません。実際の休憩時間は就業規則や労働条件通知書で決まり、1時間より長く定めている職場もあります。
仮眠中に一度も起こされなかった日も、労働時間になりますか?
大星ビル管理事件の最高裁判決(平成14年2月28日)は、仮眠室での待機と警報・電話への対応が義務付けられていた事案で、実際に作業した時間だけでなく仮眠時間全体を労働時間と判断しました。対応が必要になることが皆無に等しいなど、実質的に対応の義務がないと認められる事情があれば結論は変わり得るとされています。起こされなかった日があることだけでは決まらず、対応の義務と仮眠場所の拘束の有無で判断されます。
仮眠時間が労働時間なら、深夜割増も付きますか?
労働時間に当たる仮眠が22時〜翌5時にかかっていれば、その時間は深夜割増(+25%以上)の対象になります。たとえば2時〜4時の仮眠が労働時間なら、基礎時給1,500円で1回あたり750円の深夜割増が加わる計算です。仮眠時間に対する通常の賃金は労働契約の定めにより、時間外割増が付くかは勤務先の所定労働時間の決め方(変形労働時間制の有無など)によって変わります。
宿直と夜勤の仮眠は同じ扱いですか?
別の扱いです。労働基準監督署長の許可を受けた宿直(労働基準法41条3号・労働基準法施行規則23条)は、労働時間・休憩・休日の規定が適用されない特別な勤務で、宿直手当が支払われます。この記事で扱っているのは、許可のない通常の夜勤の中の仮眠・休憩です。自分の勤務が許可を受けた宿直かどうかは、勤務先の人事・総務に確認できます。
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出典・参考資料
- 労働基準法(32条 労働時間・34条 休憩・37条 深夜の割増賃金・41条)(外部サイトが新しいタブで開きます)発行主体: e-Gov法令検索(所管: 厚生労働省)・確認日: 2026-11-06
- 労働基準法施行規則(23条 宿日直・31条 休憩の一斉付与の適用除外)(外部サイトが新しいタブで開きます)発行主体: e-Gov法令検索(所管: 厚生労働省)・確認日: 2026-11-06
- 最高裁判所第一小法廷 平成14年2月28日判決(平成9(オ)608 割増賃金請求事件・大星ビル管理事件)(外部サイトが新しいタブで開きます)発行主体: 裁判所・確認日: 2026-11-06
- 岡山労働局「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(外部サイトが新しいタブで開きます)発行主体: 厚生労働省 岡山労働局・確認日: 2026-11-06
- 長野労働局「労働条件ハンドブック」(休憩)(外部サイトが新しいタブで開きます)発行主体: 厚生労働省 長野労働局・確認日: 2026-11-06
※ 本記事および紹介ツールの計算結果は概算であり、実際の給与は勤務先の規定によります。
※ 仮眠・休憩が労働時間に当たるかは、勤務先の指示の内容と勤務の実態によって個別に判断されます。本記事は判例・行政資料の一般的な整理であり、 個別の職場について法的判断を示すものではありません。具体的な扱いは勤務先の人事・総務、労働基準監督署、または弁護士・社会保険労務士等にご確認ください。